感動した!

昨日は外出していたので、競馬中継を見ることができませんでした。


で、帰宅後。
重賞・特別競走はJRAホームページの「競走成績」のページから配信映像を見ることができるので(便利な時代になりました)。
あえて、結果を見ずに、中山記念GII)の模様を視聴しました。
もちろん、個人的な注目馬は、1年9か月ぶりにごっちゃんが騎乗することになったローエングリンでした。


スタート!
ローエングリン、ポンと好スタートを見せるや、先頭に立ちました。
個人的には「…やっちゃったかな、ごっちゃん」と思ってしまいましたですよ。というのは、ローエングリン、ここ数戦、以前には見られなかった「後方に控える競馬」をして成績が再び上向き、復活のきざしが見えてき始めていたので、当然「今回も後方、ないしは中段からレースを進める」と思っていたんですね。
それがハナを奪ったものですから。自分、心の中でつぶやいてました。「スタートよすぎたのが仇になっちゃったかなあ、ごっちゃん…」と。


ところが。
前半1,000mの通過が59秒5と、開幕週の中山にしては比較的ゆったりとしたペースの逃げになりました。
「…いい感じで逃げてるなあ。どこまで粘れるかなあ」と自分。


4コーナーを回って、残り400m。
まだローエングリンのペースは衰えない。
むしろ、2番手追走のシャドウゲイトのほうが脚色鈍り気味に。


「え? 粘っちゃうの? もしかして?」


後方で脚をためていたエアシェイディダンスインザモアが猛然と追い込みを図るものの、もはやセーフティーリード。
ローエングリンは、見事に逃げ切りで、1年10か月ぶりの重賞勝利を飾りました*1


ごっちゃんとローエングリン、またごっちゃんの師であり、ローエングリンを管理している伊藤正徳調教師とのもろもろを知っているだけに、グッと来ました。
ごっちゃんがかつて「袂を分かつ」ような形で所属していた伊藤厩舎を離れたこと。
吉田豊騎手を木刀で殴るという例の事件を起こしたときに「うちの浩輝が迷惑をかけました。これから自分が叩き直しますから、どうかクビにだけはしないでください」と伊藤調教師がJRAの理事や馬主、他の調教師たちに頭を下げて回っていたこと。
そのことをずっと後に知ったごっちゃんが久しぶりに伊藤調教師のもとを訪ねたとき、「これからはまた、2人で一緒に歩いていこう」「俺が育てた馬が海外の大レースに挑戦するとき、おまえがジョッキーとして乗って勝つ。それが俺の夢なんだ」と言われたということ。
その曲折を経て、厩舎期待のローエングリンの主戦を任され、2003年中山記念GII)、マイラーズカップGII)を連勝したこと。
勢いをかって1番人気で臨んだ安田記念であったものの、ローエングリンは調子が下降気味で3着に終わったこと。
天皇賞・秋で、因縁浅からぬ吉田豊騎乗のゴーステディと2頭競り合い、前半1,000m56秒4の超ハイペースを演じた挙句、2番人気を裏切り13着に終わったこと。
伊藤調教師は、元騎手としてごっちゃんが「引けなかったこと」は理解しつつも、調教師としてローエングリンからごっちゃんを下ろさざるをえなかったこと。
2005年安田記念、新たに主戦を務めていた横山典弘騎手の騎乗停止によって、1年7か月ぶりに1戦だけごっちゃんが手綱を任されたものの、17着に終わったこと。
そして、今回、前走まで手綱を任されていた田中勝春騎手がシャドウゲイトに先約があったため、やはり久々にごっちゃんに「コンビ復活」の機会が与えられたこと。


…そりゃ心中期するところあったでしょう、ごっちゃんも。


「ごっちゃんのことだから、またインタヴューで大泣きしてるかもなあ」と思ったら。
案の定…でした。
「またチャンスをもらえたことで、嬉しいという気持ちと…(もう涙で言葉になっていない)。この馬のことを僕はずっと大好きでいたし、常に乗ったときには一生懸命乗ってたつもりです。先生にも恩返しができたと思います。僕も辛かったし、先生も今まで本当にこの馬にはすごくいろんな思いを…(また言葉に詰まる)。本当に、今日は何も言葉が出ないです」。


YouTube」で見つけたインタヴュー見て。
不覚にも、こちらも目頭が熱くなってきました。


いつもの「パフォーマンス」は一切なし。
心の底からローエングリンの復活を喜び、涙に打ち震えるごっちゃんを見ていて、もらい泣きしないのがムリってもんです。


ローエングリン復活」を目の当たりにした伊藤調教師も、「調教師になってこれだけ嬉しいことはない」と涙を流してごっちゃんと抱き合ったとのことですから…師弟の心中に去来するものはいかばかりだったことでしょう。


「彼も少し大人になりましたね。人間として成長しました」と愛弟子について語ったという伊藤調教師。
願わくば、次戦に予定されているマイラーズカップ、そして次々戦の安田記念も、ローエングリンの手綱を再びごっちゃんに預けていただければ…とファンとして願わずにはいられません。
今のローエングリンなら、状態さえ万全なら、どんなレース展開でもいけると思います。8歳ではあるものの「まだまだ馬が若い」とのことですし、もう少しだけ「夢を見させて」いただければ…と思います。そしたら、もう総力挙げて応援しますよ。馬券は買えませんけど(笑)。
ワーグナーの楽劇に登場する「白鳥の騎士」の名前を戴いた「未完の大器」が、ひたむきに戦い続ける騎手とのコンビを継続して、最後の栄光を掴んでくれる日を楽しみにせずにはいられません。


★★5年ぶりに「安田記念で泣きたい」です。自分も。人気blogランキング★★

*1:2005年マイラーズカップGII)以来。このときの鞍上は横山典弘騎手。ちなみに、ローエングリンはこれでGII4勝目。GIでは、JRAでは3着2回(2002年宝塚記念、2003年安田記念)が最高位だが、海外GIで2着1回(2002年ムーラン・ド・ロンシャン賞(仏))がある。