ごっちゃん

疲れていると。
よくカッとんだ夢を見ます。


昨夜。
夢の中で、ごっちゃんと飲んでいる自分がいました。
(注.弊ブログでずっと「ごっちゃん」という呼び方を使い続けていたら、最近「誰のことか分からない」とご指摘を受けたので、念のために付記しておきます。JRAの後藤浩輝騎手のことです)
しかも。
やけに親しげに、数年来の知己のようなノリでした。


その夢の中での会話。


ご:「ところで、○○ちゃん(注.CasparBartholinがリアル友人たちの間で呼ばれている愛称)、ぶっちゃけ“後藤浩輝”という騎手を初めて意識したのっていつ頃だった?」
C:「うーん…。エスパシオでダービーに出た頃だったかなあ…」


…すみません、夢の中のごっちゃん。
自分、ウソついてました。


ごっちゃんがエスパシオで日本ダービーに騎乗した*11998年当時といえば。
確かに「…そういや、後藤ってアメリカ武者修行帰りだったよなあ。最近勝ち鞍増えてきてるなあ」とチラリと意識してき始めてはいましたが。
「チラリ」程度でした。
当時の関東は、岡部幸雄という「絶対君主」の牙城を横山典弘が崩して初の関東リーディングを奪って(1996年)以来、両者が激しく鎬を削っていた頃で、的場均も現役騎手として健在、他のトップどころといえば、現在も活躍している柴田善臣蛯名正義田中勝春…といったところで、ごっちゃんは「最近出てきた有望株」といった程度の認識でしかありませんでした。そう、現在の関東で例えるならば…松岡正海吉田隼人クラスのポジションといったところだったでしょうかねえ。


自分がハッキリと「後藤浩輝」という騎手を意識したのは。
その翌年、1999年の関屋記念GIII)で。
リワードニンファに騎乗して、1分31秒6という当時の1,600m日本レコードで重賞2勝目を上げた頃からだったと思います。
その年のごっちゃんは、8月半ば時点までで既に前年とほぼ肩を並べる61勝を上げて、リーディング争いに加わるぐらいの勢いで、イヤでも注目させられる存在でした。


そして。
正直に言います。


ごっちゃんの存在を自分の中に決定的にインプットしたのは。
まさにそんな最中に起きた「あの事件」でした。
ええ、それは間違いないです。


競馬ファンなら誰もが知っている。
吉田豊騎手を木刀で殴る」という事件を起こしたことによって。
4か月の騎乗停止処分を受けることになった、あの事件でした。


話は夢ネタからそれるのですが。
いい機会なので、語らせてください。
(競馬に興味のない方は、以下スルーしてくださってもかまいません)


確かに。
ごっちゃんが「暴力に訴えた」ことは、決して許されることではありません。
ただ、聞くところによると、この事件が起こった背景には、前週のレースで蹴り癖のある自分の馬について注意を促したところ「そんな馬端っこに寄せとけ!」などと吉田騎手に怒鳴られたことに起因しているのだとも言われています。
吉田豊騎手は、(今はどうだか知りませんが)当時ごっちゃんに限らず先輩騎手に対してラフな言動を取ることが少なくなかったといわれています。そして、ごっちゃんはそんな彼の言動を注意しているうちに諍いになってしまったのだということでした(だからって「木刀まで持ち出さんでも…」とは思いますが(笑))*2


事件後のインタヴューで。
「暴力を振るったこと自体は申し訳なく思っているし、反省しているけど、申し訳なく思っているのは『暴力に訴えたこと』のみ。その背景については自分は間違っていないと信じている」と彼が語っていたのを聞いて。
不思議と、シンパシーを感じずにはいられなかったのを、よく覚えています。
その頃の自分は、今よりずっとずっとナイフみたいに尖っていて、己の信じるところを曲げずに他者とぶつかることもままある始末でした。今でも「ほんの気持ちカドが取れた」くらいで、本質は変わっていないのかもしれませんが…。


そんな自分が。
「愚直に己を信じたがゆえに過ちを犯してしまった」彼に、著しい親近感を感じたのは。
必然だったのかもしれません。
後藤浩輝」という騎手を、復帰後応援していこう…そう思った瞬間だったと思います。


それからは。
ユーセイトップランであっと言わされた(そして、エガオヲミセテのこともあってしんみりさせられた)2000年ダイヤモンドステークス
岡部幸雄騎手と激しい関東リーディング争いを見せてくれたこと。
こちらも涙が出そうになって困った、アドマイヤコジーンでのGI初戴冠。
ローエングリンとの一連のドラマ。
すべったり、笑ったりのインタヴューやパフォーマンス*3


間違いなく。
自分の競馬シーンに、彩りを添えてくれたのは、ごっちゃんでした。


以前にも弊ブログで書かせていただきましたが。
ごっちゃんの魅力は。
「不器用だけどひたむきに、そして自分らしさを100%出そうと頑張っている姿が伝わってくる」ところだと思います。
彼の騎乗を見るたびに、「自分だけにしかない何かを、必死に探そうとしている」と思えならないのです。


そして。
間違いなく、彼は「ファンを楽しませることを常に念頭に置いている」騎手だと思います。
その姿勢においては、JRA所属騎手でも1、2だと思います。
「ファンあっての競馬」ということを理解してくれる騎手の存在というのは、本当にありがたいと思わずにはいられません*4。昨今の馬インフルエンザにおけるJRAのバタバタな対応を見るにつけ、肝心の騎手にごっちゃんのような存在がいてくれることが、1競馬ファンとして嬉しくて仕方がないのです。


…夢の話に戻りますが。
自分が「エスパシオで…」云々と答えたら。
夢の中のごっちゃんにも笑いながら言われました。
「…エスパシオって、俺ダービー初騎乗だよ。○○ちゃんウソついてない!?」と。


もし。
万が一、本当に「万が一」ですが。
本当にごっちゃんと飲む機会を持つことができて。
その席で、同じ質問をされたとしたら。


自分は、正直に、かつ胸を張ってごっちゃんに答えたいと思います。
「やっぱり『あの事件』が決定打だったと思う。だけど、あの事件があったからこそ、自分は後藤浩輝のことを応援していきたいと思ったし、後藤浩輝のまっすぐさに惹かれたんだと思うんだ。それは嘘偽りのない気持ちだから」と。


多分。
これからも自分は。
馬柱の中に真っ先に彼の名前を探し続けるのだと思います。


★★今年は「2着が多い」のがちょっと気がかりですけど。人気blogランキング★★

*1:結果は16着。勝ち馬はスペシャルウィーク

*2:もちろん、この報道も(この後に書いたことも含めて)「一面からの報道である可能性はある」…ということだけは付記させていただきます。というわけですので、吉田豊騎手のファンの方には「事実無根だ!」など言いたいことも多々あるかもしれませんが、その辺りはご容赦いただければ、と思います。

*3:1番印象に残っているのは、2002年のダイヤモンドステークスキングザファクトで制したとき、カメラが正面で切り替わった瞬間に思いっきり志村けんの「アイーン」をやってのけたことでしょうか。ちなみに、レース後、ごっちゃんの携帯電話の留守電には「アイーンはちょっと…」という武幸四郎からのメッセージが吹き込まれていたそうです。後輩に諭されてどうする(笑)。

*4:いろいろなやり方はあると思うんですけどね。「愛想はなくても、騎乗においては常に誠実であり、決してファンを裏切らない」藤田伸二騎手のようなスタイルも自分は大いに好きですけれどね。