笑わん殿下

「19歳美里銅初の平成生まれメダル/柔道」(http://beijing2008.nikkansports.com/judo/p-sp-tp0-20080811-394339.html

北京五輪:柔道>◇10日◇女子52キロ級
柔道女子52キロ級の中村美里(19=三井住友海上)が、日本初の平成生まれのメダリストになった。準決勝で敗れたが、3位決定戦で金京玉(韓国)に快勝して銅メダルを獲得した。本人は「金以外は同じ」と悔し涙を流したが、「谷亮子の後継者」といわれたニューヒロインが、ようやく世界で才能を開花させた。12年ロンドン五輪では日本女子柔道のエースとして世界の頂点を目指す。
平成生まれ初のメダリストに笑顔はなかった。「金メダルが欲しかったんで、悔しいです」。「谷さんに続く銅メダルですよ」の声にも「金以外は同じです」。左目から涙がこぼれると「悔し涙です。納得できません。もう少しいいところを見せたかったのに」と唇をかんだ。
初の五輪は厳しい戦いの連続だった。初戦の2回戦タラングル戦はゴールデンスコア方式の延長戦で相手が指導を受けて辛くも突破。3回戦は小外刈りで奪った効果を守りきった。準決勝のアン・グムエ戦ではパワーに圧倒され、1分すぎに指導を受け、そのままタイムアップ。「相手の方が全然強かった…」。世界トップとの力の差を痛感した。だから初メダルも喜べなかった。
金京玉との3位決定戦では「自分を出す」ことだけを考えた。1分すぎに小外刈りで有効を奪い、そのまま上四方固めで快勝した。女子柔道では92年バルセロナ大会の田村亮子以来の10代でのメダル獲得だったが、応援団の「よくやった」の声にも、中村はクスリとも笑わなかった。
05年12月、福岡国際女子を高校1年で制して「YAWARA2世」と脚光を浴びた。だが、直後から身長が伸び、筋力がついて減量に苦しんだ。母美智代さん(42)は「ご飯ははしの先に少しだけ乗せて一口。水はおちょこ1杯だけ。見てられなかった」と振り返る。柔道の成績も下降した。
52キロ級に転級した昨秋に転機が訪れた。「谷さんとも試合をしたかった。階級を上げたら48キロ級で逃げたと言われるのが嫌だった。でも北京を目指すなら、と決断しました」。同時に成績も急上昇。07年世界選手権銅メダルの西田を退け、代表をつかんだ。
抜群の運動能力を誇る。水泳は小学校低学年ですべての泳法をマスター。小学校では少年野球チームで外野や二塁を守った。柔道では切れのある足技を得意とする。男子代表の平岡らが「あれはすごい。教えられてもできない」と話す。
初の五輪を終えた19歳は、最後まで反省ばかりを口にした。「準決勝は力で対抗しようとしてしまった。相手の力を利用したり、崩したりすることを考えないと。表彰式でも『次は一番高い所に上りたい』と思っていました」。23歳で迎えるロンドン五輪。金メダルしか考えない中村が、日本のエースになる。
[2008年8月11日9時12分 紙面から]


(写真:女子52キロ級で銅メダルを獲得し笑顔を見せる中村(撮影・蔦林史峰))

…自分も。
かつては「勝負の世界」に身を置いていた立場として。
彼女の悔しい思いはとてもよく分かります。


「優勝以外は、準優勝もビリも一緒」でしたっけ。
かつて誰かが言ってた言葉。
あれは座右の銘でした。


極端な話。
優勝したって、勝負内容に満足がいかなければ、全然嬉しくないときすらありました。
「こんな勝ち方じゃ、優勝したって全然納得できない!」と吠えたことも。


貪欲に、自分にとっての「最強」だけを目指していたのだと思います。
その気力・精神力が切れたとハッキリ自覚したときに、自分が終着駅に辿り着いたことを自覚して、「勝負の世界」から身を置くことを決意しました。


かつて、女子プロレス界でトップの一角を担っていた豊田真奈美という選手がいたのですが*1
彼女、「これまでの名勝負は何ですか?」と聞かれると、決まって「私の中では、これまで満足のいくような名勝負は1つもない。今後そのような勝負ができるように頑張っていく」と答えるのが常でした。
自分らから見れば山のように「名勝負」と呼べるクオリティーの試合があったのに、他の選手のレヴェルなら既に「名勝負10番勝負」も楽にセレクションできるはずの試合積み重ねているのに…です。
自分に厳しく、常に上を上を目指している人なのだな…と思いました。


中村選手。
銅メダルに喜びを示しても誰にも責められないであろうのに、この発言。
「その心意気たるやよし」です。
今回の悔しさ、涙の味を忘れなければ、彼女はもっともっと強くなると思います。
そうであってほしいと思います。


余談ですが。
彼女の愛称は「ハム」。
「ハムスターに似ているから」だそうです。
なるへそ。


★★忘れかけていた思いを久しぶりに揺り起こされました。人気blogランキング★★

*1:ていうか、彼女、まだ現役ですよね。