忘れえぬ味

かつて通っていた大学のキャンパスがあったあたりは。
典型的な学生街だったわけで。
自分らが入学する遥か昔から変わらず営業していた食堂やレストランがたくさんありました。


それらの多くは。
時代の波には勝てなかったようで。
卒業後、キャンパス周辺に顔を出すたびに、1つ、また1つ…といった具合に消えてなくなっているのに気づかされることがままありました。


そんな店の1つに。
「カナリヤ」という名前のレストランがありました。
メニューは「カレーライス」と、「スタミナライス」という名前のマーボ丼の、2種類だけ。
でも、とにかく安い。「スタミナライス」はスライスされたゆで卵を乗っけてもらっても350円! 何度これで糊口をしのいだことか知れません。


時は流れて。
卒業後何年かを経て、カナリヤも閉店したと風の便りに聞きました。
これまでも幾多の店が廃業したという知らせを聞いて、寂しさを禁じえませんでした。カレーの藤、トンカツ屋のフクちゃん、プレートランチのレッドピーマン…。移り変わりは世の習いではありますが、やはり往時を偲ぶよすががなくなるというのは辛いものでした*1


で。
本日。
夕飯のメニューがマーボ丼であるというのを聞いて。
ふと思いついて、浅い皿に盛ってもらい、スライスしたゆで卵をつけてもらって、「スタミナライス」を再現してもらいました。


…学生時代に戻ったような気がしました。
普通のマーボ丼なんだけど、どこか魔法が掛けられているような、そんな魅力のある味。
ゆで卵とマーボをかっこみながら、1人しんみりとしてしまいました。


★★妻は記憶ないそうです、カナリヤ。人気blogランキング★★

*1:そんななかで、いまだに現役バリバリで営業を続けている三品食堂には、いつまでもいつまでも頑張ってもらいたいものです。