知識は、塗り替えられる。おかわり。

護良親王」ネタに続いて、もう1つ「知識は、塗り替えられる」というお話を。
けっこう以前から暖めていて、「いつかブログ開設したら紹介しよう」と思っていたネタだったんですが、2週間前にさるTV番組であっさりと紹介されてしまいました。今となっては「6日の菖蒲、10日の菊」という観もなきにしもあらずですが、まあここで。


さて問題です。↑こちらの肖像画は誰の絵でしょう?


「…なんだ、足利尊氏じゃないか」。
そう言う方、少なくないはずです。


ところが!
これまた最近の研究ですが。
「この絵は足利尊氏のものではない!」とする説が有力になってきました。


日本史の図説集が年を経るごとに改訂されている様子を追いかけていくと、この肖像画の扱いが変化していくさまがよく分かります。


足利尊氏像」


と取り上げられていたこの像が、


「伝・足利尊氏像」


と「伝」の1文字アタマにつけられて「?」を呈され、しまいには


「騎馬武者像」


とミもフタもない注記にまで転落していくさまが*1


この像が「足利尊氏の像ではない」とされた理由、そのTV番組でいくつか紹介されていました。その1つに「この像の騎馬武者が乗っている馬は黒鹿毛だけど、足利尊氏の愛馬は栗毛だった」というのがありました。
ウマに目をつけるところなんぞ、なかなかニクいなあ、と思ってしまいました。そう、私はウマ好き(笑)。


では。
この像に描かれている騎馬武者の正体は誰なのでしょうか?


かつては尊氏の弟直義であるという説もありました。
が、今現在最も有力な説。
それは。
「尊氏の執事を勤めていた高師直である」という説です。


なるほど、確かに『太平記』などに描かれている師直のワイルドなイメージと、この肖像画、けっこうマッチしますね。


余談ですが、そのTV番組に出演していた渡辺いっけいさん(だったと思うんだけど…)が、こんなこと言っていました。
「自分、NHKの大河ドラマ太平記』に出演してたんだけど、そのとき、尊氏演じていた真田広之くん、この絵を見て一生懸命役作りしていたのに…」。
本当に「この絵を見て一生懸命役作り」しなくてはならなかったのは、実は高師直役の柄本明さんのほうだった、というオチでした*2


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*1:この「騎馬武者像」という注記が付された図説集は、そのTV番組で初めて見ました。車運転中に車載のTVで見ていたのですが、ハラよじれるほど大笑いしました。事故らなくてよかった…。

*2:でも、個人的には、このとき柄本明さんが演じていた「クールな中に激しさを秘めている」高師直像が実はとても大好きだったりします。