さらば皇帝!

正直言って、つい最近までシューのキャラってあまり好きではありませんでした。若い頃には「才気走った若造」って感じでなんとなくハナについていましたし、1994年に初のタイトルを獲得して以降は「憎らしいぐらいに強い」といった感じでしたし。1996年に彼がフェラーリに移籍したその瞬間に、F1観戦を始めて以来一貫して応援し続けていたフェラーリのファンをやめたぐらいです*1
しかし、彼が記録にも、記憶にも残るスーパードライヴァーであることには異存は全くありません。ワールドチャンプ7回、通算91勝、ポールポジション68回、ファステストラップ76回、総獲得ポイント1,369ポイント*2…どれも他に並ぶ者のない金字塔です。今後彼の記録を破るドライヴァーが現れるのは何年後になるか、予想もつきません*3
そんな彼ではありますが、2005年以降は苦難の連続でした。マシンが悪かったのか、タイヤが悪かったのか、予選・本戦ともに全く振るわなくなった2005年、彼を見て「…このアゴも終わったのかなあ」と思わずにはいられなかったのですが…。明けて2006年、逆境を跳ね返してアロンソとチャンピオン争いをするに至るとは思いもしませんでした。以前のように「当たり前のように勝つ」のではなく「困難を克服して勝つ」彼の走り、胸に響きました。結果として「逆転王座」はなりませんでしたが、それで彼の価値が下がることは全くありません。むしろ「男を上げて」引退していくと言っていいでしょう。
彼にとっての最後のグランプリとなったブラジルGP、フィジケラとの接触によってタイヤがバーストし最後尾まで転落したにもかかわらず、渾身の走りで4位までポジションを回復してチェッカーを受けた彼の姿は、これまでに彼が上げた91の勝利よりずっとずっと価値のある、輝かしいものであったと思います。
「皇帝」は、最後まで「皇帝」であり続けてグランプリから去ろうとしています。何の変哲もないことのようでいて、それはとてつもないことなのではないでしょうか。


2007年のグランプリが始まったそのとき。
彼がいないことに、言いようのない寂寥感を覚えてしまいそうです。


★★それにしても琢磨の「狂い咲き」にも触れねばならないところ。来年はガンバレ。人気blogランキング★★

*1:2000年代初めの「常勝フェラーリ」しか知らない人も現在では少なくないかと思いますが、自分が見始めた頃のフェラーリは「連敗記録日々更新中」というドン底状態でした。そんな御家事情にもかかわらずアグレッシヴに攻め続けたジャン=アレジとゲルハルト=ベルガーのコンビは大好きでした。

*2:以前にも述べたことありますが、1997年最終戦で「危険行為に及んだ」として彼は「全戦ポイント剥奪」という処分を受けています。が、「総獲得ポイント」という際には、1997年の78ポイントを加えてカウントするようです。

*3:とか何とか言っておきながら数年後にアロンソがあっさりと更新したりして(笑)。